遺言書とエンディングノートの違いとは?
書き方・保管方法を解説
「エンディングノートを書いておけば安心」と思っていませんか。実は、法的な効力があるのは遺言書だけです。両者の違いと、それぞれの書き方・費用・保管方法を整理して解説します。
- 遺言書とエンディングノートの決定的な違い
- 自宅で見つけた遺言書を、開けてはいけない理由
- 保管方法別、亡くなった後の手続きの始め方
- エンディングノートに書いておきたい項目
遺言書とエンディングノート、何が違う?
どちらも「自分の死後に向けた備え」という点では共通していますが、法律上の意味はまったく異なります。もっとも大きな違いは、法的な効力があるかどうかです。
| 遺言書 | エンディングノート | |
|---|---|---|
| 法的効力 | あり(民法の定める方式に従う必要がある) | なし |
| 書けること | 財産の分け方など、法律で定められた事項が中心 | 形式の制限なし。思いや希望を自由に記録できる |
| 主な用途 | 相続財産の分配を確定させる | 家族への情報共有・意思表示 |
財産の分け方について家族に確実に実現してほしい希望があるなら遺言書、それ以外の医療や介護、葬儀の希望、連絡してほしい人のリストなどを伝えたいならエンディングノート、というように役割が異なります。多くの場合、両方を用意しておくのが望ましいとされています。
遺言書の種類と、それぞれの費用・特徴
遺言書には主に3つの方式があります。もっとも利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
| 種類 | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が全文・日付・氏名を自書し押印。手軽だが形式不備で無効になるリスクがある | 基本的に無料(法務局保管を使う場合は1件3,900円) |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成に関与し、原本を公証役場で保管。形式不備のリスクが低い | 財産額に応じた公証人手数料(数万円〜) |
| 秘密証書遺言 | 内容を誰にも知られずに作成し、存在のみを公証役場で証明してもらう方式 | 公証役場手数料11,000円ほか |
自筆証書遺言を法務局に預ける「保管制度」とは
自筆証書遺言は自宅で保管することもできますが、紛失や改ざん、発見されないリスクが指摘されてきました。そこで2020年7月から、法務局が自筆証書遺言を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」が始まっています。
- 手数料は1件につき3,900円
- 原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間、法務局が保管
- この制度を利用すれば、相続開始後に家庭裁判所での「検認」が不要になる
- 保管の際、法務局職員が形式面(自書・日付・氏名・押印の有無)を確認してくれる
ただし、法務局は遺言の内容についての相談には応じてくれません。「誰に何を相続させるか」といった内容面の検討は、事前に自分で、あるいは専門家に相談しながら固めておく必要があります。
自宅で遺言書を見つけたら、絶対に開けてはいけない
自宅で保管されていた遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)を見つけても、その場で開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きを経る必要があるためです。
検認とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、日付や署名など遺言書の現状を記録し、偽造・変造を防ぐための手続きです。遺言書の保管者や発見した相続人は、相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません。特に封印(封をして印が押されている状態)がされている遺言書は、家庭裁判所で相続人(またはその代理人)の立ち会いのもとでなければ開封できないと定められています。
- 家庭裁判所外で開封すると、5万円以下の過料の対象になる。民法1005条により、検認を経ずに開封したり、遺言を執行したりした場合は過料が科される可能性があります。
- ただし、開封しても遺言自体が無効になるわけではない。過料はあくまで手続き違反へのペナルティです。誤って開けてしまった場合も、慌てず開封の経緯を記録し、速やかに検認を申し立てれば問題ありません。
- 検認を受けていないと、相続登記や口座解約の手続きが進められない。自筆証書遺言・秘密証書遺言をもとに手続きを進める場合、金融機関や法務局は検認済みであることを確認します。
検認の申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。費用は遺言書1通につき収入印紙800円と、裁判所ごとに定められた郵便切手代です。なお、公正証書遺言、および法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は、この検認の対象外です。
自宅でよくある遺言書の保管場所
「実家に遺言書があるかもしれないが、どこにあるか分からない」というケースは少なくありません。自宅保管の場合、次のような場所によく保管されています。心当たりを確認してみましょう。
- 仏壇の引き出しや、位牌・仏具の近く
- 自宅の金庫、耐火金庫の中
- タンスや書棚の奥、重要書類をまとめたファイルの中
- 通帳・実印・保険証券など、大切な書類と一緒の場所
- 書斎や寝室の引き出し
- 銀行の貸金庫
- 信頼している友人・知人、顧問の専門家(弁護士・司法書士など)への預け先
見つからない場合でも、後述する遺言検索システムや法務局への照会で、存在の有無を確認できることがあります。自宅内をひと通り探しても見つからないからといって、遺言書がないと決めつけないほうがよいでしょう。
亡くなった後、どうやって手続きを始める?保管方法別に解説
遺言書は、保管方法によって相続開始後の手続きの入り口が異なります。
| 保管方法 | 相続開始後、最初にすること |
|---|---|
| 自宅保管(自筆証書遺言・秘密証書遺言) | 開封せずに家庭裁判所へ提出し、検認を請求する |
| 公正証書遺言 | 全国どこの公証役場でも「遺言検索システム」で存否を照会できる。検認は不要 |
| 法務局保管(自筆証書遺言書保管制度) | 全国どこの遺言書保管所でも「遺言書保管事実証明書」「遺言書情報証明書」を請求できる。検認は不要 |
公正証書遺言の存否は、相続人などの利害関係人が、遺言者の死亡が確認できる書類(除籍謄本など)と自分が相続人であることが分かる戸籍謄本、本人確認書類を持って、最寄りの公証役場で照会を申し出ることで確認できます。1989年以降に作成された公正証書遺言であれば、全国規模で検索が可能です。存在が確認できたら、実際に作成された公証役場で謄本を請求します。
法務局保管制度を利用した自筆証書遺言についても同様に、相続人などが「遺言書保管事実証明書」(存否のみ確認)または「遺言書情報証明書」(内容も確認できる)を、全国どの遺言書保管所からでも請求できます。原本そのものの閲覧だけは、実際に保管されている遺言書保管所で行う必要があります。どちらの証明書を請求した場合も、他の相続人にその旨が通知される仕組みになっています。
エンディングノートに書いておきたい項目
エンディングノートには決まった形式がなく、市販のノートやアプリ、自由帳のようなものでも構いません。一般的に、次のような項目を書いておくと、残された家族の助けになります。
- 医療・介護に関する希望(延命治療の意向、かかりつけ医、持病や服薬情報)
- 葬儀・お墓に関する希望(形式、宗教、納骨先など)
- 財産の一覧(預貯金口座、保険、不動産、負債など)※金額の記載は必須ではありません
- デジタル遺品の情報(SNSやサブスクの解約方法、パスワードの保管場所)
- 連絡してほしい人のリスト(親族、友人、勤務先など)
- ペットのこと(引き継ぎ先の希望)
- 家族へのメッセージ
備えていても、遺族には手続きが残る
遺言書やエンディングノートを用意しておくことは、とても大切な備えです。ただし、それだけで死後の手続きがすべて完了するわけではありません。遺言書があっても、相続登記や名義変更、財産の分配といった実務は、遺された家族が動いて進める必要があります。エンディングノートに希望が書かれていても、葬儀の手配や関係者への連絡は、やはり遺族の役目です。
つまり、生前の備えと、亡くなった後に実際に手を動かすことは、別の話なのです。
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「エンディングノートに希望は書いてあったけれど、何から手をつければいいか分からない」というときこそ、力になれる場面です。
よくある質問
自宅で遺言書らしきものを見つけたら、まず何をすればいいですか?
開封せず、封がされたままの状態で家庭裁判所に提出し、検認を請求してください。中身を確認したくなっても、家庭裁判所外での開封は避けましょう。公正証書遺言や法務局保管の遺言であれば、検認は不要です。
遺言書があるかどうか分からない場合、どうやって調べますか?
公正証書遺言であれば、相続人などの利害関係人が最寄りの公証役場で「遺言検索システム」を使って存否を照会できます。法務局保管制度を利用した自筆証書遺言であれば、全国どの遺言書保管所でも証明書の交付を請求できます。どちらも、遺言者の死亡が確認できる書類と、相続人であることが分かる戸籍謄本などが必要です。
エンディングノートだけで、財産の分け方を指定できますか?
できません。エンディングノートには法的な効力がないため、記載した通りに財産を分けてほしい場合は、別途、遺言書を作成する必要があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選べばいいですか?
手軽さを重視するなら自筆証書遺言(法務局の保管制度と併用がおすすめ)、確実性を重視するなら公正証書遺言が向いています。財産関係が複雑な場合や、形式不備のリスクを避けたい場合は公正証書遺言が安心です。
エンディングノートはいつから書き始めればいいですか?
決まった時期はありません。健康なうちから少しずつ書き始め、状況が変わるたびに更新していくのが一般的です。全部を一度に完成させる必要はありません。
遺言書を書いたことを、家族に伝えておくべきですか?
伝えておくことをおすすめします。存在を知らせておかないと、発見されないまま相続手続きが進んでしまう可能性があります。法務局の保管制度を使う場合も、家族の誰かに保管の事実を伝えておくと手続きがスムーズです。
遺言書やエンディングノートがあれば、遺族は何もしなくていいですか?
そうではありません。書かれた内容を実際の手続き(相続登記、名義変更、葬儀の手配など)として実行するのは、遺された家族の役目です。備えがあることで迷いは減りますが、作業そのものは別に発生します。
まとめ|「書く」ことと「動く」ことは、それぞれ別の備え
遺言書とエンディングノートは、どちらも大切な備えですが、役割が異なります。財産の分け方を確実に実現したいなら遺言書、思いや希望を伝えたいならエンディングノート。そして、それらを実際の手続きとして動かすのは、遺された家族です。
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