「死後事務委任契約」って何?
おひとりさまの備えと、遺族が直面する現実
頼れる家族がいない方の備えとして注目される死後事務委任契約。仕組みと費用、契約先を選ぶときの視点を整理しつつ、契約のないまま家族を送ることになった側、つまり遺族に実際何が起きるのかも合わせて見ていきます。
- 死後事務委任契約で依頼できること・できないこと
- 費用相場と、契約する際の注意点
- 契約がない場合、遺族には何が起きるのか
死後事務委任契約が注目される背景
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の事務手続きを、あらかじめ決めた相手(受任者)に依頼しておく契約です。単身世帯や、子どものいないご夫婦、家族と疎遠な方を中心に注目されている制度です。
人が亡くなると、遺体の引き取りや火葬・納骨の手配、公共料金の解約、住まいの片付けなど、多くの手続きが発生します。これらは本来、家族が担うことが多いものですが、頼れる家族がいない場合、誰も対応できず手続きが宙に浮いてしまうことがあります。死後事務委任契約は、そうした空白を防ぐための備えです。
頼めること一覧|火葬・納骨からデジタル遺品まで
- 病院・施設からのご遺体引き取り
- 火葬・納骨(散骨や樹木葬などの希望も含む)の手配
- 家財整理・住居の原状回復
- 公共料金や各種契約の解約・精算
- SNSやサブスクなど、デジタル遺品の整理
- 関係者(親族・知人・勤務先など)への連絡
- ペットの引き継ぎ先の指定
特に遺体の引き取り手がいないケースは珍しくなく、総務省の調査では2018年4月から2021年10月の間に10万人以上が「引取者のない死亡人」として報告されています。引き取り手がいない場合、遺体は自治体によって火葬され、無縁仏として扱われることになります。こうした事態を避けたい方にとって、死後事務委任契約は現実的な備えといえます。
頼めないこと|遺言書・任意後見との役割分担
一方で、次のようなことは死後事務委任契約の対象外です。
| 対象外の内容 | 代わりに必要な備え |
|---|---|
| 財産の相続手続き(預金の払い戻し、不動産の名義変更など) | 遺言書の作成 |
| 生前の生活支援・財産管理・介護の手配 | 任意後見契約 |
財産に関する意思を残したい場合は遺言書、判断能力が低下したときの備えには任意後見契約というように、目的に応じて複数の制度を組み合わせる必要があります。
ひと目で分かる|3つの制度の対象時期と役割
| 制度 | 対象になる時期 | できること |
|---|---|---|
| 死後事務委任契約 | 死亡後 | 火葬・納骨・家財整理など、財産以外の事務手続き |
| 遺言執行 | 死亡後 | 財産の名義変更・分配など、相続に関する事務 |
| 任意後見契約 | 生存中(判断能力低下後) | 財産管理・生活支援。死亡と同時に効力が終了 |
3つの制度は役割が異なるため、どれか一つで完結するものではありません。「死後の手続き」「財産の承継」「生前の生活支援」は、それぞれ別の備えとして検討する必要があります。
費用はどのくらい?契約時と実行時にかかるお金
契約書の作成費用に加え、実際にサービスを実行する際の報酬が発生します。契約内容や依頼先によって幅がありますが、契約時費用と実行報酬をあわせて数十万円〜100万円以上になることもあります。事業者によっては入会金・年会費や、生前に葬儀費用相当額を預けておく預託金が必要になる場合もあります。
契約先を選ぶときにチェックしたいポイント
- 受任者選びが最重要。家族・友人でも、専門家でも、民間事業者でも受任者になれますが、信頼性と対応範囲の明確さを事前に確認する必要があります。
- 契約は公正証書での作成が望ましい。私的な書面だけだと、本人死亡後に契約自体の有効性を疑問視されるリスクが残ります。
- 事業者の運営体制を確認する。2023年に国が「高齢者終身サポート事業者ガイドライン」を策定しており、費用やサービス範囲の説明が明確かどうかが一つの判断基準になります。
契約がないまま家族を送った人に、実際に起きていること
ここまでは、本人が生前に契約を結ぶケースについて解説してきました。しかし現実には、死後事務委任契約を結んでいないまま家族を見送る方が大半です。
その場合、遺族は契約のない状態で、火葬や納骨の手配、家財整理、公共料金の解約、相続登記といった手続きに、突然向き合うことになります。何から手をつければいいのか分からない、平日に役所へ何度も足を運ぶ時間が取れない、遠方に住んでいて動けない――。こうした声は、契約を結んでいたかどうかに関わらず、多くのご遺族から聞かれます。
おやこと|遺族の「できないこと」だけを支える選択肢
「おやこと」は、死後事務委任契約のように本人が生前に契約しておくサービスではありません。想定しているのは、すでに家族を見送り、目の前の手続きに向き合っているご遺族です。
すべてを代行するのではなく、遺族だけでは対応が難しい部分だけを、遺族からの依頼に応じてサポートします。あわせて、亡くなった日を基準に「何を・いつまでに」やるべきかをタスクとして整理し、手続き全体を効率よく進められるようにすることも、おやことの役割です。
| 死後事務委任契約 | おやこと | |
|---|---|---|
| 依頼するタイミング | 本人が生前に契約 | 家族が亡くなった後、遺族が依頼 |
| 依頼する人 | 本人 | 遺族 |
| 役割 | 手続き全体を受任者が代行 | 遺族が自分でできることは自分で進めつつ、できない部分だけ依頼/タスクの整理・効率化を支援 |
よくある質問
死後事務委任契約は誰でも契約できますか?
契約行為ができる判断能力があれば、基本的に誰でも契約できます。単身世帯の方だけでなく、子どものいないご夫婦や、家族はいても頼りにくい事情がある方にも活用されています。
受任者は家族や友人でもなれますか?
なれます。特別な資格は不要で、家族・友人・知人でも受任者になれます。専門性の高い内容を含む場合は、行政書士や司法書士などの専門家、民間の事業者に依頼するケースも多く見られます。
家族がいても死後事務委任契約は必要ですか?
家族がいれば法律上は家族が手続きを担うことが多いため、契約が必須というわけではありません。ただし、遠方に住んでいる、疎遠であるなどの事情がある場合は、家族がいても契約を検討する方がいます。
契約後に内容を変更することはできますか?
可能です。葬儀の形式や納骨先の希望が変わった場合など、受任者と合意のうえで契約内容を見直すことができます。定期的に内容を確認しておくと安心です。
おやことと死後事務委任契約は併用できますか?
役割が異なるため、状況によっては両方が助けになります。死後事務委任契約は本人が生前に備えるもの、おやことは家族を見送った後に遺族が依頼するものです。契約の有無にかかわらず、実際に手を動かす遺族の負担を軽くする点でおやことは活用いただけます。
まとめ|備える人にも、支える人にも、選べる安心を
死後事務委任契約は、頼れる家族がいない方にとって心強い備えです。一方で、家族がいる場合でも、実際に手続きを担うのは多くの場合、遺された家族自身です。
生前に契約で備えるか、亡くなった後に遺族として支えを借りるか。どちらの立場であっても、一人ですべてを抱え込む必要はありません。
「おやこと」は、ご遺族からの依頼を受けて、遺族だけでは対応が難しいことの一部をサポートするサービスです。あわせて、亡くなった日を基準に必要な手続きをタスクとして整理し、効率よく進められるようにお手伝いします。